税理士試験の簿記論について徹底解説!

  1. ジョブノックトップ
  2. ブログ一覧
  3. 税理士試験の簿記論について徹底解説!

税理士試験の簿記論について徹底解説!

税理士試験の中でも、重要な位置を占める科目の一つが「簿記論」です。税理士を目指す方にとって、簿記論の攻略は避けて通れない道と言えるでしょう。「簿記論ってどんな科目?」「税理士試験の最初に受けるべき?」そんな疑問を持つ方のために、この記事では、税理士試験の必須科目である簿記論の概要から、試験内容、難易度、そして効果的な勉強方法までを解説します。税理士試験や簿記論の学習を始める前の情報収集として、また、現在勉強中の方のロードマップ確認として、ぜひ最後までお読みください。


簿記論とは?
税理士試験は、11科目中から5科目(会計科目2科目、税法科目3科目)に合格する必要がありますが、簿記論は、税理士試験の必須科目である会計科目2科目のうちの1つです(もう一つは「財務諸表論」)。多くの受験生が、最初に学習を始める科目として選ぶことも多く、まさに税理士試験の『入口』といえる存在です。

簿記論は、企業の日々の取引を正確に記録・集計・整理し、最終的に企業の財政状態や経営成績を明らかにする報告書(決算書等)を作成するための「簿記」のルール・技術を問う科目です。企業会計原則や会計基準に基づき、正確な仕訳、勘定記入、そして決算整理など決算書の作成に至るまでのプロセスに関する知識とスキルが求められます。

税理士は、企業の税務申告を行うのが主な業務ですが、その税務申告の基礎となるのが、企業が作成した決算書です。つまり、簿記論で学ぶ「正確な決算書を作成するルールや技術」は、税理士として働く上で欠かせない実務に直結する土台となるスキルであり、必須科目に位置づけられているのも納得でしょう。理論よりも計算問題が中心の出題構成となっており、問題ボリュームが多く、正確で素早い計算能力や事務処理能力も問われる試験科目となっています。

簿記論の試験内容

簿記論の試験概要を把握しておくことは、学習計画を立てるうえで欠かせません。ここでは、受験資格から試験日程、出題傾向、合格ラインなどを解説します。(参照:『国税庁HP』

●受験資格
税理士試験の簿記論には、特別な受験資格は設けられていません。
税理士試験には、税法科目の受験に際しては「学識」「職歴」「資格」による受験資格が設けられていますが、簿記論・財務諸表論の会計科目に関しては、誰でも受験することが可能です。(以前は受験資格が必要でしたが、令和5年度(2023年度)から撤廃され、誰でも受験可能になりました。)

●試験日程など
■税理士試験:例年、8月上旬~中旬の3日間にわたって実施されます。
■試験時間:2時間です。
■受験地:全国の主要都市に設けられています。正確な日程や時間割は、国税庁のホームページにて例年4月上旬から4月中旬頃に公表されます。(▼関連記事:『税理士試験の試験会場は?いつわかる?過去の会場は?注意点は?』
■受験申込受付:例年4月下旬~5月中旬ごろです。申込書類や必要書類の準備をして、申込みをします。(▼関連記事:『税理士試験の申込み方法は?スケジュール・必要書類・注意点を解説』
■合格発表:合格発表の日程は、例年11月下旬から12月上旬頃です。

●試験範囲・出題形式・傾向
■試験範囲:複式簿記の原理、その記帳・計算及び帳簿組織、商業簿記のほか工業簿記を含む。 ただし、原価計算を除く。
■出題形式:記述式
■出題傾向:試験問題は通常、個別問題2問(第1問:25点、第2問:25点)と総合問題1問(第3問:50点)で構成されています。個別問題は、簿記の仕組みを理解しているかを、個別の論点ごとに問うような出題がされ、総合問題では決算整理や財務諸表作成など、応用的な知識と計算力、スピードと正確性が求められます。

簿記論は難しい?

簿記論は税理士試験の中でも比較的取り組みやすい科目とされる一方で、毎年多くの受験生が苦戦しています。その理由や実際の合格率を見てみましょう。

●合格ライン
合格基準点は各科目とも満点の60%です。
ただし、その年の難易度や平均点によって補正がされる場合があり、相対評価となる年もあります。合格を勝ち取るためには、「難問・奇問に惑わされず、基本的な問題を確実に正答する」ことが重要です。多くの受験生が正解できる基本的な論点での失点を避けることが、合格への最短ルートとなります。

●簿記論の合格率
国税庁の公表データで近年の簿記論合格率の推移を見ると、
■2024年(第74回):17.4%(受験者数17,711人、合格者3,076人)
■2023年(第73回):17.4%(受験者数16,093人、合格者2,794人)
■2022年(第72回):23.0%(受験者数12,888人、合格者2,965人)
■2021年(第71回):16.5%(受験者数11,166人、合格者1,841人)
■2020年(第73回):22.6%(受験者数10,757人、合格者2,429人)
となっており、16~23%で推移しています。​(参照:国税庁HP

2024年(第74回)以降の過去10回を遡ってみると、合格率が低い年で12.6%(2016年第66回)だった年もあり、比較すると近年の合格率は上昇傾向にあります。税理士試験の必須科目である簿記論、財務諸表論は、税理士資格を目指すにあたって最初に受験する方が多く、他の税法科目と比較しても受験者数が多いです。また、2023年(第73回)から簿記論と財務諸表論の受験資格が撤廃されたことにより、受験者数も増加しております。

簿記論の合格率を見ると、決して簡単な試験ではないことが分かりますが、他の税法科目と比較すると合格率は高い傾向にあり、しっかりと基礎を積み上げることで合格の可能性は高まるでしょう。簿記論は税理士試験の最初の関門として、多くの受験生が苦労する科目ですが、ここを突破できれば、その後の税法科目の学習にも勢いがつきます。

簿記論合格のための勉強方法

簿記論の合格は、適切な計画と効率的な勉強方法にかかっています。ここでは勉強時間の目安や独学の可否、効率的な学習法を解説します。

●簿記論合格に必要な勉強時間の目安
簿記論の合格に必要な勉強時間の目安ですが、400〜1,000時間程度と言われており、幅が大きくばらつきがありますが、これは、受験者が簿記の知識・素養や、経理・会計業務実務の有無などによって差があるためだと考えられます。
日商簿記1級などを取得している場合は、簿記論の出題範囲の知識をカバーしており、簿記論合格までにかかる勉強時間は300~450時間程度で合格レベルに到達する可能性もありますが、一方、簿記に触れたことがない全くの未経験者は、まず簿記3級・2級の内容から学ぶ必要があり、簿記の基礎を習得するのに一定の時間がかかるので、合計で1,000時間以上かかるケースもあります。

●独学でも合格できる?
結論から言うと、簿記論は独学でも合格可能ですが、難易度は高いと言えます。
独学の最大のメリットは「費用の安さ」です。市販の参考書や問題集から自分でテキストを理解し、問題演習を繰り返すことで、専門学校に比べると大幅にコストを抑えられます。独学での注意点は、学習計画の管理や情報収集を怠ると非効率になりがちです。出題傾向の把握や最新情報の確認は、自分でこまめに行う必要があります。また、疑問点を自力で解決しなければならず、モチベーションの維持も課題となります。
効率よく短期間で合格を目指すなら、専門学校や通信講座、費用を抑えたWebオンライン講座などの利用がおすすめです。自分に合った学習スタイルを見極めることが、合格への近道となります。
▼関連記事:『税理士試験は独学で合格できる?』

●財務諸表論とセットで勉強がおすすめ
必須科目である会計科目の簿記論と財務諸表論は試験範囲が重なるため、同時学習が非常に効率的で、学習に必要な時間も短縮することができます。たとえば、簿記論で学んだ仕訳処理が、財務諸表論で理論的に説明できるようになります。多くの予備校でも、この2科目を同時受講するカリキュラムが推奨されていますし、簿記論・財務諸表論を同時に受験する人も多いです。

●効果的な勉強法
合格を目指すには、暗記ではなく内容を理解することが何より重要です。仕訳や会計処理の意味を正しく理解することで、応用問題にも対応できる力がつきます。復習間隔を意識し、定期的に学んだ内容を振り返る習慣をつけ、出題範囲の勉強が一通り終わったら、時間を計って問題を解く練習をしましょう。電卓のブラインドタッチをマスターすることも得点アップに欠かせません。

税理士試験は長期戦です。簿記2級、簿記論、財務諸表論、そして税法科目へと続いていくため、勉強を楽しんで続ける工夫が大切です。自分なりのモチベーション維持法を見つけ、継続しやすい環境を整えましょう。また、学習が進むにつれ疑問点も増えてくるため、質問できる講師や仲間など、疑問を解消できる環境を確保しておくこともポイントです。
簿記論は試験時間内に解き切るのが難しく、限られた時間で確実に得点できる問題を見極める力も求められます。理解と時間管理を意識して、戦略的に学習を進めることが、簿記論合格の最短ルートです。効率的に学習し、合格を勝ち取ってください!

簿記論を学ぶメリット~就職・転職にも有利に~

簿記論は、税務申告の土台となる知識であり、税理士業務を遂行するための基礎体力となります。他の科目を学ぶ際にも、簿記論の知識が前提となるため、理解がスムーズに進みます。また、簿記論の学びは資格試験だけでなく、会計・税務・経理などの分野でキャリアを広げる強力な武器になります。企業の「数字」を理解する力が身につくため、就職・転職・昇進・昇格などにもメリットになります。

簿記論に合格すると、税理士試験の1科目合格者として履歴書に記載できるだけでなく、会計・経理の専門知識を証明する資格として高く評価されます。特に、以下のような分野で就職・転職に有利に働き、試験勉強で身につけた「正確な数字の扱い方」や「会計的思考力」は、様々な職種でも重宝されるスキルです。
■会計事務所・税理士事務所・税理士法人
■企業の経理・財務部門、金融機関
■コンサルティング会社

会計事務所・税理士事務所でのキャリアを考えている方は、ぜひ『ジョブノック~Job Knock~』をチェックしてください。会計・税理士事務所業界専門の求人サイトで、エリア・業務内容・雇用形態・こだわり条件で検索でき、自分にぴったりの職場を見つけやすくなっています。
ジョブノックとは
ジョブノックとは?~あなたに合った仕事と出会える「ジョブノック」についてご紹介!無料登録・求人検索や応募・選考・利用方法について~ご利用はこちらから↓