「税理士」という仕事に興味があるけれど、将来性はどうなんだろう？後継者不足って聞くけど、それって大丈夫なの？そんな疑問を持つ方もいるかもしれません。
日本の企業経営者と同様に、税理士業界でも経営者の高齢化と後継者不足が進んでいます。税理士という仕事に興味があっても、この後継者不足が将来性にどう影響するのか不安に感じる方もいるかもしれません。

この記事では、この「後継者不足」が税理士業界でなぜ起きているのか、その背景を深掘りします。そして、この状況をネガティブな側面として捉えるのではなく、求職者にとってチャンスと捉え、会計事務所・税理士事務所で働くことのメリットと、就職・転職活動で注意すべきポイントを解説します。

全国の税理士事務所のうち、およそ9割が従業員10名以下の規模と言われています。これらの多くは個人経営で、所長自身が事業主として事務所を切り盛りしています。
所長の高齢化が進む一方で、後継者がなかなか見つからないのが現状です。この後継者問題の主な要因を見ていきましょう。

1. 人材不足と採用難
全体の若年人口が減少しており、若手税理士が少なく、採用競争が激化しているため、後継者候補となる人材を確保・育成することが難しい状況です。特に地方の事務所では、この傾向がより顕著です。地方の税理士事務所では、地域人口の減少と若者の都市部流出によって、そもそも後継者候補となる人材が地域に残っていないというケースもあります。都市部の大手税理士法人への就職を選ぶ若者が多く、地方事務所の人材確保が難しくなっています。

2.親族が後継にならない／独立志向の変化
「親が税理士だから自分も継ぐ」という風潮が薄れ、親族が税理士資格を持たない、あるいは他業界志望で承継しないケースも増えています。理由はさまざまですが、試験の大変さや、自由なキャリア選択志向、都市部への流出などが影響しています。

3. 業界の専門化・大規模化
大手税理士法人の台頭や業務の専門化や複雑化により、小規模事務所の後継者確保が一層難しくなっています。事務所の業務内容が高度化し、経営継承へのハードルが上がっています。

4. 事務所経営の課題
価格競争やIT化・DX化への対応、顧客との関係や経営ノウハウが属人化しているなど、一部の事務所では経営上の課題に直面しています。後継者の育成が難しい、将来の承継者に経営ノウハウを伝える体制が整っていない場合もあります。小規模事務所では対応力や事業体力、古い体質などの面から将来性に不安を感じ、後継者が手を挙げにくいケースもあります。

後継者不足という課題を抱える税理士事務所ですが、実は求職者にとって多くのメリットがあります。ここでは、転職活動を有利に進めるために知っておきたい、4つのメリットを紹介します。

1. 経営に近いポジションを早期から経験できる
人材が限られているため、若手スタッフでも所長の右腕として経営に近い立場で仕事を任される機会があります。後継者を必要とする事務所では、「実務＋経営視点」での成長が期待されており、責任ある仕事を任せてもらえる機会が増えます
これにより、税務・会計の専門知識だけでなく、経営者目線で物事を考える力が養われ、将来的なキャリアアップに大きく役立ちます。

2. 将来的な「所長候補」としてのキャリアパスを歩める
承継問題を抱える事務所にとって、有望な人材は「未来の所長候補」として期待されます。税理士として独立するだけでなく、“所長候補”として事務所を引き継ぐキャリアパスが見える点は、他業界にはあまりないチャンスです。
所長と信頼関係を築き、直接経営ノウハウや顧客との関係構築のコツなどを学べる環境は、貴重な経験となるでしょう。

3. 独立志向を持つ人には、顧客基盤を引き継げる可能性もある
「税理士としていつかは独立したい」と考えている方にとって、顧客・スタッフ・設備など経営基盤を引き継げる可能性があるのは大きな魅力です。特に、独立にはゼロから顧客を開拓する大変さが伴いますが、後継者不足の事務所では、所長が退職・引退する際に既存のクライアントを承継できることもあります。これは、独立を成功に導く大きな要素となるでしょう。

4. 中小事務所では幅広い実務経験を積みやすい
後継者不足に悩む事務所の多くは、中小規模の事務所です。中小規模の税理士事務所では、一人の担当者が申告書の作成から顧客対応、経営相談まで幅広く対応するケースが多くなります。そのため、大手法人とは異なり、税務・会計の総合力を実践で磨けるのが魅力で、専門分野に特化したスキルだけでなく、オールラウンドな対応力やマネジメント力を身につけることができ、市場価値の高い人材へと成長できます。
後継者候補として期待される存在になれば、通常よりも責任ある仕事を任されることが多く、成長が期待できます。

後継者がいない税理士事務所で働くことにはメリットがある一方で、いくつか注意すべきポイントもあります。就職・転職を成功させる魅力的なキャリアパスを描くためには、事前に事務所の方針や所長の考え方をしっかりと確認しておくことが重要です。

1. 承継計画が曖昧だと将来像が不透明になることもある
「後継者を探している」としても、具体的な承継計画がないまま人を採用している事務所も存在します。そうした場合、数年働いたとしても経営権の移譲やポジションの昇格が進まず、キャリアが停滞してしまうリスクもあります。
そのため、採用面談や求人票の段階で「将来的にどのような立場を期待しているのか」「何年後に所長交代を予定しているのか」など、ビジョンを共有しているかどうかを確認することが大切です。

2. 所長との相性・経営方針の確認は必須
後継者として働く場合、所長との関係性は非常に重要になります。所長が長年培ってきた経営方針や仕事の進め方を尊重し、うまく引き継いでいけるかどうかが、その後のキャリアを左右します。面接や面談の機会を通じて、所長の考え方や人柄をしっかりと見極め、自分の価値観と合うかどうかを確認しましょう。また、所長が抱えている課題や今後やりたいことを聞いてみることで、入社後の自分の役割や貢献できる範囲が見えてきます。

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参考：『税理士の後継者募集の求人とは？ポイントを徹底解説！』

ここまでお読みいただき、後継者不足の税理士事務所で働くメリットや注意点についてご理解いただけたかと思います。高齢化が進むにつれて、今後後継者がいない税理士事務所は増加し、求人ニーズも増えてくるでしょう。しかし、実際に「自分に合った事務所を探す」「後継者候補として歓迎される職場を見つける」となると、情報収集や比較検討には時間がかかります。

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